「由加山にお参りしたら、あとは瀬戸大橋を渡って帰るだけ」
前回、前々回と、岡山県倉敷市の由加山(ゆがさん)をご紹介してきました。こんぴらさんとの「両参り」で知られるお山です。あなたも、お参りをすませたら、まっすぐ帰りの道をたどるつもりではありませんか?
ちょっと待ってください! 由加山からほんの少し山を下りると、そこは日本でも指折りの「繊維のまち」なのです。
由加山があるのは、倉敷市の児島(こじま)。今回は特派員、両参りの帰り道に寄り道をして、デニムの職人さんの工房と、ジーンズの並ぶ通りを歩いてきました。
1. わが家のメダルに、児島がぶら下がっていた
出かける前に、わが家で一つの品を手に取りました。
数年前に走った、おかやまマラソンの完走メダルです。首にかけるための紐は、平たく、目の詰まった織物。これが真田紐(さなだひも)です。
真田紐は、細い織機で平たく織った丈夫な紐のこと。児島では江戸時代、この真田紐や小倉織(こくらおり)、足袋(たび)の生産が始まったといわれています。やがて学生服や作業着へと広がり、1965年には児島で国産ジーンズの量産が始まりました。
紐から、足袋、学生服、そしてジーンズへ。……わが家の引き出しにしまってあったメダルの紐が、そんな長い歴史の入り口だったとは。琴平の家の中で、ひとり感心してしまいました。
2. デニム職人さんの工房で
ひょんなご縁から、デニムの小物やバッグを作っている職人さんの工房を訪ねさせていただきました。気になるところがあると、すぐ行ってしまう。それが私です。
作業台には、藍色やオレンジの糸がずらり。職人さんによると、デニムを縫う糸は、芯がポリエステルで、そのまわりを綿で巻いたもの。強くて切れにくいうえに、洗うたびに綿の部分の色が落ちて、デニムと一緒に味が出てくるのだそうです。
こだわりは、縫い終わってからも続きます。できあがった品は、お店に出す前に必ず一度、洗濯機で洗う。「ワンウォッシュ」と呼ぶそうです。洗うと、風合いや手触りがまるで変わるのだとか。
「手触りとかね、僕は肌触りとか、そういうのかなり気にします」
裏地には、やわらかなガーゼ。表には、太いところと細いところがある糸で織った、でこぼこした手ざわりのデニム。染めた生地から薬品で色を抜いて柄を出す「抜染(ばっせん)」という技法を使ったものもありました。同じものは一つとしてない、手作りの品ばかりです。
3. 道路まで、デニム色
職人さんの案内で、児島ジーンズストリートを歩きました。
もとはこのあたりで一番にぎわった、古い商店街だったそうです。シャッターが目立つようになった通りに、ジーンズのお店が一軒、また一軒と入り、今では個性的なジーンズ店が軒を連ねる通りになりました。古い商店や古民家を改装したお店も多く、どこをのぞいても楽しい。名前を一度は聞いたことのある有名ブランドのお店から、個性的な品ぞろえの小さなお店まで、さまざまです。
そして、ふと足もとを見ると……道路まで、デニム色。
平日だというのに、通りは歩く人でにぎわっていました。職人さんの話では、海外からのお客さんも多く、ジャパンブルーとこの通りを目当てに、はるばるやってくるのだとか。
もう一つ驚いたのが、こんなお話です。児島のまちの中には、生地を織るところ、縫うところ、洗いや色落ちの加工をするところ、特殊なボタンを打つところまで、みんな近くにそろっている。だから、生地から製品になるまで、まちの中で全部できてしまうのだそうです。
一本のジーンズが、このまちをぐるりとめぐって生まれてくる。そう思うと、ショーウインドーのジーンズが、なんだか違って見えてきました。
まとめ:両参りの帰り道に、もう一つの寄り道を
由加山を下りて、繊維のまち・児島へ。わが家のメダルの紐からたどった旅は、職人さんの手のぬくもりと、デニム色の道で締めくくりとなりました。
昔の参拝者は、こんぴらさんと由加山を行き来しながら、どんなおみやげを手にしたのでしょう。もしかしたら、丈夫な真田紐だったのかもしれませんね。
次のこんぴら参りを「両参り」にするときは、ぜひ由加山のふもとにも寄り道を。あなたの家の引き出しにも、児島から来たものが、こっそり眠っているかもしれませんよ。
カテゴリー:特派員おすすめ情報/歴史・文化
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