特派員ブログ

海の向こうの神ッキーたち 由加山の境内は神ッキー渋滞中!?

「隠れ神ッキーって、こんぴらさんだけの話でしょう?」

このレポートでは以前から、こんぴらさんの参道や琴平のまちなかにひそむ「隠れ神ッキー」をご紹介してきました。葉のすき間からこちらを見るガネーシャ、茂みの奥でにかっと笑う黒い顔。足を止めた人だけが気づく、謎の住人たちです。

前回は特派員、瀬戸内海を渡って、岡山県倉敷市の由加山(ゆがさん)へ。こんぴらさんとの「両参り」で知られるお山をご紹介しました。

ちょっと待ってください! じつはあの日、由加山で見つけたのは、こんぴらさんへの熱い気持ちだけではなかったのです。

参道を歩きながら、つい目が探してしまうのは、やっぱりあの人たち。……いました。それも、こんぴらさんとはちょっと様子のちがう、海の向こうの神ッキーたちが。

 

1. 野生の神ッキーが現れた

由加山の石段を登りはじめて、すぐのことです。石垣の上の、草ぼうぼうの斜面に目をやると……。

草の斜面にぽつんと立つ、笠をかぶった隠れ神ッキー

いました。笠をかぶって、とっくりを提げた、おなじみの神ッキー。それが、雑草のなかに、ひとりで立っています。

こんぴらさんの隠れ神ッキーたちは、植え込みの葉っぱの陰に、ちょこんと収まっていることが多いものです。ところが、こちらはどうでしょう。手入れされた植え込みではなく、伸び放題の草むらのなか。半分、自然に還りかけています。

茂みの奥から、二体並んでこちらをうかがう神ッキーたち

少し先の茂みには、二体の神ッキーが並んでいました。枝の向こうから、じっとこちらをうかがっています。

これはもう、隠れているというより、すみついている。某ゲーム風に言うなら、「やせいの かみッキーが あらわれた!」です。

海を渡った神ッキーたちは、現地で野生化していたようです。

 

2. 境内は、神ッキー渋滞中

石段を登りきって境内に入ると、今度は野生どころではありませんでした。

びっしりと彫り込まれた狐の神ッキーたち。手前の2体は玉を抱えています

まず目に飛び込んできたのが、この彫刻です。……数えようとして、あきらめました。大きな狐の神ッキーのうしろに、小さな神ッキー、そのうしろにも、また神ッキー。岩山のような形に、何十体もの神ッキーが、ぎゅうぎゅうに彫り込まれています。

境内のあちこちを歩くと、ほかにも牛、亀、にわとり、石の犬の神ッキー。どこを見ても、何かがいます。

こんぴらさんの神ッキーは、ひっそり隠れて、見つけてもらうのを待っているタイプ。それに比べて、由加山の神ッキーたちは、隠れる気などはじめからなく、仲間と一緒に「ここにいるよ」と自分から前に出てくるタイプのようです。仲間が仲間を呼んで、ついに境内からあふれ出してしまったのでしょうか。それとも、進化をとげて数を増やしたのでしょうか。いずれにしても、境内は神ッキーの大渋滞です。

岩の上でくつろぐ牛の神ッキー親子。ひなたぼっこの最中でしょうか

岩の上では、別の神ッキーの一家が、のんびりひなたぼっこをしていました。黒い神ッキー、茶色の神ッキー、小さな子神ッキー。こんなにくつろいだ神ッキーたちは、こんぴらさんでもなかなか見かけません。

 

3. 進化の果てに、ついに神さまに

境内を歩いていて、思わず二度見したのがこちらです。

よだれかけをつけた石像。台座には「海神」の文字

……タコです。

大きな丸い頭に、くりっとした目。赤いよだれかけをつけて、八本の足をひらりと広げています。台座の石には、大きく「海神」。その横には「大綿津見命(おおわたつみのみこと)」、そして「豊漁」「海上安全」の文字が刻まれていました。

大綿津見命は、日本の神話に登場する海の神さまです。瀬戸内海を見おろす由加山らしい、と言えばいいのでしょうか。

……ということは、です。草むらで野生化し、境内からあふれ出し、数を増やしてきた由加山の神ッキーたち。その進化の果てに行き着いたのが、このお姿なのかもしれません。立派な台座にのぼり、「海神」の名を背負い、よだれかけまでかけてもらっている。隠れ神ッキーは、進化をかさねて、ついに神さまになってしまったのでしょうか。

真面目に考えるほど、だんだん楽しくなってきます。

こんぴらさんも、海の神さまとして船乗りたちにあつく信仰されてきたお宮です。海の神さまつながりで、こんぴらさんの神ッキーたちにも、海の仲間がいてもよさそうなものですが……。そこは、由加山のほうが一枚上手のようです。

狐の神ッキーに声をかける、甲羅を背負った神ッキー

シダの葉かげでは、甲羅を背負った神ッキーが狐の神ッキーに、声をかけていました。こちらは、こんぴらさんの神ッキーと同じ、正統派の隠れ方。海の向こうにも、昔ながらの神ッキーは、ちゃんといたのです。

 

まとめ:海の向こうの神ッキーたちは、独自の進化をとげていた

草むらで野生化した狸の神ッキー、境内からあふれ出した狐の神ッキーの大群、そしてよだれかけのタコ神。由加山の神ッキーたちは、こんぴらさんの神ッキーとは、ひと味もふた味もちがっていました。

海を渡った先で、神ッキーたちは独自の進化をとげ、ついには神さまにまでなっていたようです。

祀られている神さまたちも、なかなか個性的。何の神さまなのか、よくわからないものもあります。でも、それを見て回るだけで、十分に楽しいのです。

もし由加山とこんぴらさんの「両参り」に出かけるなら、ぜひ両方の神ッキーを見くらべてみてください。こんぴらさんでは葉やお土産物屋のすき間に目をこらして。由加山では、草むらと境内のすみずみに目をやって。

あなたの見つけた神ッキーは、隠れていましたか。野生化していましたか。それとも……もう、神さまになっていましたか。

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