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シン・神ッキー、現る!? 参道を下りたまちなかで、迷子の一匹を保護しました

「隠れ神ッキーって、参道にしかいないんでしょう?」

以前このレポートで、こんぴらさんの参道にひそむ「隠れ神ッキー」をご紹介しました。葉のすき間からこちらを見るガネーシャ、壁ぎわにつながれた金属の犬。石段の途中で足を止めた人だけが気づく、謎の住人たちです。あれを読んで参道を探してくださったあなた、ありがとうございます。

ちょっと待ってください! 彼らの持ち場は、参道だけではなかったようです。

私の日課は、朝のまち歩きです。石段を下りて、お土産屋さんの並びも抜けた、ふだん着のまちなか。そこにも……いました。しかも今回は、見つけただけでは終わりません。迷子の一匹を、私が"保護"することになったのです。

名づけて、「シン・神ッキー」。まちの神ッキーたちの登場です。

 

1. まちなかの茂みから、にかっと笑う黒い顔

いつものまち歩きの途中、板塀の前の小さな植え込みに目をやったときのことです。

シダの茂みの奥で、黒くて丸い顔が大きな口をあけて笑っています

……いました。

まんまるの黒い顔に、輪っかのような耳がふたつ。白い線で描かれた目と鼻、そして顔の半分ほどもある大きな口。牙まで見せて、にかっと笑っています。こんなに機嫌のいい顔で茂みにひそむ人を、私はほかに知りません。

参道のガネーシャと同じです。葉っぱの陰に半分かくれて、気づいた人にだけ顔を見せる。場所は違っても、やり口は立派な隠れ神ッキーではありませんか。

そして、仲間はほかにもいました。別の朝、少し歩いた先の、下りたシャッターの前です。

シャッターの前に立つ石のうさぎ。目を細めて、にんまり笑っています

石のうさぎです。ごま塩もようの石を磨きあげた、つるりとした体。長い耳をぴんと立て、目を細めて、にんまり。

……こちらは、隠れる気がまったくありません。堂々と立っています。

それなのに、急ぎ足の人は気づかずに通り過ぎていくのです。隠れていないのに、見つからない。これはこれで、かなりの高等技術ではないでしょうか。

 

2. 下りてきたのか、これから登るのか

ここで、ひとつ疑問がわいてきます。

まちなかの神ッキーたちは、参道から下りてきたのでしょうか。それとも、これから参道へ登っていく途中なのでしょうか。

思い出すのは、前回もご紹介した「こんぴら狗(いぬ)」です。江戸時代、自分ではお参りに行けないご主人に代わって、首に袋をさげて旅をした犬たち。旅人から旅人へと引き継がれながら、こんぴらさんを目指したと伝えられます。

……そうです。こんぴら狗は、最初から参道にいたわけではありません。遠くの町から、道をたどって、ここまでやって来たのです。

だとすると、まちなかで出会う神ッキーたちも、まだ旅の途中なのかもしれません。茂みの黒い顔は、石段の手前でひと休み。石のうさぎは、シャッターが開くのを待って出発。そう思って眺めると、あの笑顔が「もうちょっとで着くぞ」と言っているように見えてきます。

もちろん、逆かもしれません。お参りを済ませて山を下り、すっかり気に入ったこのまちに住みついた。その線も捨てがたい。

どちらなのか。……それは、誰にもわかりません。本人たちに聞いても、にかっと笑うだけです。

 

3. 道ばたに転がっていた、見習いの一匹

そんなことを考えながら歩いていた、十月のある朝です。

道のアスファルトの上に、オレンジ色のかたまりが落ちていました。

アスファルトの上で横倒しになっていた、手のひらサイズの神ッキー

近づいてみると、木彫りの犬でした。刃物のあとをそのまま残した、ごつごつした面。オレンジと白の塗り分けは、柴犬でしょうか。それが横倒しになって、鼻先を地面につけています。

隠れ神ッキーは、隠れているから隠れ神ッキーです。道の上で転がっていては、隠れるどころではありません。丸見えです。まだ見習い、といったところでしょうか。

どこかの軒先から転がり出たのか、誰かの落とし物なのか。それはわかりません。ただ、このままでは車に踏まれてしまいます。

拾い上げて、すぐそばの塀の足もとへ。車も人も踏まない小さなくぼみに、そっと座らせました。

塀の足もとに座らせると、きりっとした顔でこちらを向きました

起こしてみると、白い眉がふたつ。黒い鼻に、ぴんと立った耳。さっきまで転がっていたとは思えない、きりっとした顔です。

収まるべきところに収まって、ようやく一人前。見習いから、堂々の「シン・神ッキー」に昇格です。おめでとう。

そして、ふと気づきました。旅人から旅人へ引き継がれて進んだという、こんぴら狗。……私もいま、その旅人のひとりになったのではないか、と。運んだ距離は、ほんの数歩ですけれど。

 

まとめ:まちの神ッキー、名づけて「シン・神ッキー」

隠れ神ッキーの舞台は、石段だけではありませんでした。まちなかの植え込み、シャッターの前、塀の足もと。参道へ向かう道すがら、もう宝探しは始まっています。

今回も、彼らがどこにいるのかは秘密にしておきます。

次に琴平を歩くときは、石段に着く前から、足もとと茂みの奥に目をやってみてください。参道の神ッキーとはひと味ちがう、まちの「シン・神ッキー」が、にかっと笑って待っているはずです。

あの木彫りの一匹は、いまも塀の足もとにいるのでしょうか。それとも、もう次の旅人に引き継がれて、石段のほうへ向かったのでしょうか。

カテゴリー:特派員おすすめ情報/ことひら百景

エリア:琴平

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