特派員ブログ

この写真、どこかヘンじゃないですか!? 琴平の朝に撮れた「脳がバグる」1枚

「見慣れた景色を、わざわざ写真に撮ってもね……」

琴平のまちを歩いていると、川を渡り、石垣を横目に見て、そのまま通り過ぎる。何度も通るうちに、風景はいつのまにか「知っている景色」になっていきます。私も、ずっとそうでした。

ちょっと待ってください! 先日の朝、その「通り過ぎるだけの景色」で、自分の目を疑う1枚が撮れてしまいました。

説明はあとにします。まずは、この写真をご覧ください。

 

1. これ、何が写っているかわかりますか

さて、これは何の写真でしょう。手がかりは石垣と街灯です

……いかがでしょう。

石垣が、宙に浮いています。建物は地面から生えているのではなく、上からぶら下がっている。街灯はうつむき、雲は足もとに広がっている。

見れば見るほど、どこが地面で、どこが空なのか、わからなくなってきませんか。私はこれを撮った直後、自分で撮ったにもかかわらず、しばらく画面を眺めて首をかしげていました。一瞬、脳がバグる感じ。

種明かしの前に、もうひと目だけどうぞ。手がかりは、左の石垣と、右下の建物です。

 

2. 答え合わせです。ぐるりと、逆さにしてみます

はい、こちらが元の写真です。

風のない晴れた朝、金倉川の水面がまるごと鏡になっていました

……これなら、わかりますね。

写真1は、この写真をそのまま180度回しただけ。手を加えたのは向きだけで、色も明るさもいじっていません。

そして、ここからが本題です。写真1で「宙に浮く石垣」に見えていたもの――あれは、水に映った石垣でした。ぶら下がっていた建物も、うつむいた街灯も、足もとの雲も、すべて水面(みなも)に映った姿です。

写真2をよく見ると、下半分は川の水です。護岸の石垣も、その上の建物も、電線も、空も、上下がぴたりと対称に並んでいます。水鏡(みずかがみ)と呼ばれる状態ですね。

撮ったのは、9月のある朝の6時すぎ。場所は、琴平のまちなかを流れる金倉川(かなくらがわ)です。

写真の奥のほうに、橋が2本、小さく重なって見えているのがわかるでしょうか。手前が黄色い欄干の栄橋(さかえばし)、その向こうが赤い欄干の玄孝橋(げんこうばし)。それぞれ「黄橋(きばし)」「赤橋(あかばし)」の通称で呼ばれている2本です。

ではなぜ、この朝はこんなに鏡になったのか。条件はたぶん3つ。風がないこと。晴れていること。そして、朝が早いこと。 水面はほんの少しの風でもさざ波が立ち、いちどさざ波が立てば、鏡はあっさり壊れてしまいます。風が寝ている晴れた朝にだけ、川はこういう顔を見せてくれるのです。

つまりこれ、狙って毎日撮れる写真ではありません。……そう思うと、なんだかありがたい1枚に見えてきませんか。

 

3. 「脳がバグる」のは、たぶん私たちが賢いから

もうひとつ、この写真でおもしろいと思ったことがあります。

逆さにしただけなのに、どうしてあんなに混乱するのでしょう。

たぶん私たちは、写真を見るときに、無意識のうちにいくつも前提を置いています。空は上にある。建物は立っている。重いものは下に落ちる。その前提があるからこそ、ひと目で「あ、川沿いの風景だな」と理解できるわけです。

ところが上下をひっくり返されると、その前提が全部はずれます。それでも脳はなんとか辻褄(つじつま)を合わせようとして、しばらく迷子になる。……あの一瞬のバグは、いつも高速で働いてくれている頭が、律儀に仕事をしようとした結果なのかもしれません。

うれしいことに、この遊びに特別な道具は要りません。スマホ1台と、風のない朝があればいい。

そして琴平は、これがやりやすいまちだと思います。川があり、石垣があり、その上に門前町のまちなみが乗っている。水面に映すだけで、まちがまるごと二重になるのです。川だけではありません。石段の途中でしゃがんでみる。軒先を下から見上げてみる。同じ場所でも、角度を変えるだけで、知らない景色が出てきます。

見慣れたものほど、見る角度を変えてみる。……これは、写真にかぎった話ではないのかもしれませんね。

 

まとめ:答え合わせは、風のない朝の川で

次に琴平へお越しになるなら、ぜひ一度、早起きをしてみてください。

風のない、晴れた朝。川をのぞきこんで、まちが水に映っていたら、しめたものです。撮った写真を、スマホの中でくるりと回してみる。それだけで、たったいま自分が立っていた場所が、見たこともない景色に変わります。

さて、最後にもう1枚だけ。同じ朝、同じ川の少し先で撮った写真です。

同じ朝、同じ川の少し先で。赤い橋が2本、写っています

この中には、赤い橋が2本あります。片方は本物で、片方は本物ではありません。

……どちらが本物か、わかりますか。

答えは、書かないでおきます。ヒントもなしで。……どうぞ、じっくり探してみてください。

カテゴリー:ことひら百景/特派員おすすめ情報

エリア:琴平

あと763段ある人