特派員ブログ

プレイバックことでん観光列車 ~金毘羅まいりはことでんの新型電車で~

8月のある日、ことでん琴平線に乗車した際に仏生山駅で新型電車を見る機会があった。

そういえば、令和6年(2024年)3月に香川県地域公共交通計画が策定され、それに基づきことでん(高松琴平電気鉄道(株))が6月に鉄道事業再構築実施計画を国交省に申請して、認定された。その中の具体的施策の柱の一つが「省エネ性能の高い新造車両の導入及び安全輸送設備の更新」であった。ことでんはこれ迄電車の「中古車博物館」とか「古典電車の楽園」といわれてきたが、ここで新型電車の導入に踏み切った。ことでん利用者(たまにしか乗らないが)の一人として、新型電車導入の経緯と今後について調べてみた。

令和6年年3月、ことでんは経営改善計画の一環として令和8年(2026年)後半に1960年以来66年ぶりとなる新型車両を導入すると発表した。それから2年半が過ぎた。この間、導入コンセプトの決定や車体デザインの募集が行われ、それに基づいて車両の設計、製作が行われてきた。今回の計画では、まず新型車両を2編成4両導入し、さらに4両増やす計画である。 最近の発表では、今年度中に新型電車2000形を使って臨時に観光列車を運行する事も検討するとのこと。ことでんの現行車両はほぼ全てが中古車両で製造から48~69年経過している。新型車両はこの老朽車両と入れ替える為であり、入れ替え対象は車体年齢(車齢)の一番高い1070形(車齢69年、元京急700形)であり、導入路線は1070形が4両ある琴平線と見られている。

なお、新型車両導入費用はことでんの他に国、県、地域からの補助金に大きく依存している。(設計費用は2億円、1両約5億円で4両合計では22億円、8両で計42億円)               今後も現役車両の老朽化が進むため、琴平線では2000形電車による入れ替えがさらに進むと思われる。琴平線から外された車両のうち比較的新しい車両は長尾線に移されると思われるが、線路幅(ゲージ)の異なる志度線はそれが出来ない。志度線の車両は車齢5257年と比較的若いものの、いづれは車両更新計画が必要となる。

新型車両導入は我々利用客にとってはうれしい話であるがが、ことでんにとっては止むを得ない事情のためである。琴電や伊予鉄などローカル私鉄はこれまで県外の大手私鉄の中古車両を多く使って来た(琴電は主に京浜急行電鉄、伊予鉄は京王電鉄)。しかし、現状ではこれらの中古車両の老朽化が進み、かつ交換部品の調達が困難となってきたために、車輌の整備や維持が出来なくなってきている。さらに近年は、中古車両の購入価格が高騰し、市場に出回る数も少なくなっており、調達が困難となっている。特に、ことでんの線路やホーム長さは、車体の長さ(車体長)が18mを前提に作られている為、購入する中古車両も車体長が18mである必要がある。これまで中古車両を供給してくれた鉄道会社は車両の世代交代が進み、車体長20mが主流となったため車体長18mの中古車両が品薄となっている。この為、ことでんは新型車両を自社で設計し発注する決断をした。この問題は今や全国のローカル私鉄共通の問題であり、ローカル私鉄での新型車両の導入が相次いでいる。ことでん以外にも、平成28年(2016年)静岡鉄道、一畑電車、2025年伊予鉄道、2028年予定小田急箱根鉄道線などの例がある。愛媛県の伊予鉄道も近年新型車両7000系を導入した。車体はオレンジ色で流線型のフォーム、車体は軽量ステンレス製、電気指令式ブレーキを初めて採用し制動機能が向上、制動エネルギーを電力として再利用する「回生ブレーキ」を採用している。

さて、ことでんの新型車両であるが、デザインコンセプトは「うみ・まち・さと 地域をつなぐ、ことでんの新しい顔」である。外観デザインは3案が提示され、投票により「フレッシュ(香川の新しい風)」が選ばれ、設計に反映された。

2000型車両はJR東日本の子会社である総合車両製作所(横浜市)が製作し車体はステンレス製(運転台廻りは鋼製)、車体長は18m、乗降ドアは1両につき片側3か所ある。車体は製作元の総合車両製作所のものがベースとなっている。外観は琴電のブランドカラーである青色を基調として青、水色、白としドア下に黄色を追加で配置している。正面は青で白の弓状のラインが入っており、笑っている顔の様に見える。

車両側面は下部に水色と白を配し上部に青のライン、車体の両端は側面と前面の色が重なったデザインとなっている。車内は明るい青の色調で統一されており、ロングシートで座席仕切り壁のデザインも丸みのある独特なものとなっている。

車内の案内表示にはLCD(液晶ディスプレイ)が、照明にはLEDが採用されるとみられている。運転体制はワンマンを前提としており、電気指令式ブレーキを初めて採用して制動機能を向上させており、制動エネルギーを電力として再利用する「回生ブレーキ」を採用して省電力を図っている。新型車両の琴平線導入は、金刀比羅宮参拝の観光客に快適な移動手段を提供すると共に、地域住民にとっても利便性の向上につながると考えられる。さらに、新型電車は観光列車としての活用も検討すると発表があったが、琴平線に導入されるのであれば急行電車としても運行することをぜひ検討してほしいものである。我々乗客としては新型電車導入に合わせて急行電車の復活を期待したい。増加するこんぴら参りの観光客の足として快適な移動空間を提供できると共に、琴平の観光にも大きく貢献できる。

かつてことでんは昭和33年(1958年)3月~昭和42年(1967年)3月に琴平線で急行列車3往復を運転していた。この時の高松築港~琴平間の所要時間は約40分で、従来の普通電車より25分短かった。この時の急行列車の停車駅は高松築港、瓦町、栗林公園、琴電琴平、準急列車の停車駅は高松築港~ 岡本の各駅と滝宮、琴電琴平であった。急行列車が廃止された後も平成3年(1991年)3月までの10年間にわたり準急列車が運転された。急行列車や準急列車の廃止は、モータリゼーションの進行による乗客数減少が一因と思われるが、観光客が増加している現在では観光向け急行電車の必要性は高いと感じる。

≪トピックス≫                                      最近の出来事として、ことでんは91日から駅の券売機を廃止してウェブアプリを使用した「ことでんデジタル券売機」QUICK TRIP Ticketへの切り替えを行った。券売機利用者が約1割と少なく、券売機の維持管理コストの削減が主な理由とのこと。早速琴電琴平駅で様子を見てきた。利用者が駅のポスターに付いているQRコード(2次元コード)をスマホで読み取りWEBブラウザ上で乗車券購入するという仕組みで、QRコードを読み取った駅が始発駅となり、行き先毎の切符が表示されるのでそれを選択するという仕組み。改札時にスマホの画面を駅係員に提示する。無人駅で乗車の場合は車内で乗務員がスマホを確認するという。この方式は全国でも初めてといわれている。一部主要駅には券売機が残るので、デジタル券売機を利用しない人の場合は従来通りとなる。券売機のない無人駅の場合は運賃を降車駅の集札箱に入れるとのこと。外国の観光客にとっては便利になる一方で、スマホを持たない年配者やスマホ決済をしない乗客が戸惑わないか心配である。

カテゴリー:特派員おすすめ情報   エリア:町外

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