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まちの軒先が、なぜかオリーブ推し!? こんぴらさんの門前町で"香川県愛"に気づいた話

「こんぴらさんの門前町って、こう、和風の町並みですよね?」

石畳、格子戸、老舗の看板、軒先にゆれる提灯。あなたが思い浮かべるのも、たいていそんな風景ではないでしょうか。私もずっと、そう思っていました。

ちょっと待ってください! 先日、カメラを片手に琴平のまちをゆっくり歩いていたら、その"和風の町並み"の足元で、思いがけない多くの葉っぱを目にしました。細長くて、表は緑、裏がふっと銀色に光る……オリーブです。

お店の軒先に、民家の玄関わきに、路地の入り口に。海の神様のおひざもとで、どうして地中海生まれの木がこんなに幅をきかせているのでしょう。今回は、その理由をたどってみました。

まちを歩くと、オリーブ、オリーブ、またオリーブ

はじめは、気のせいかと思いました。ところが、意識して見はじめると止まりません。

家の前に据えられた、大ぶりの鉢のオリーブ。琴平では、これがふつうの眺めです

店先に一鉢、その先の軒下に二鉢、角を曲がればまた一鉢。大きさもいろいろで、ひざくらいの若木もあれば、見上げるほどに育った株もあります。参道のまわりから路地の奥まで、まちじゅうにオリーブが点々と置かれているのです。実際、この記事の写真も、日をあらためて何度か歩くうちに、別々の場所で撮りためたものです。

なぜ、オリーブなのか。答えのひとつは、香川県のプロフィールにありました。

じつはオリーブは、香川県の県花であり、県木でもあります。県の花に選ばれたのが昭和29年(1954年)、県の木に選ばれたのが昭和41年(1966年)。香川県のマーク(県章)にも、平和のシンボルとしてオリーブの葉があしらわれています。花も木も県のマークもオリーブ、というのは全国でもかなり珍しいはずです。

しかもこの木、香川にとっては"よそ者"ではありません。明治41年(1908年)、当時の国が三重・香川・鹿児島の三県を指定して、アメリカから取り寄せた苗でオリーブ栽培の試験を始めました。日本で獲れた魚を国産のオリーブ油に漬けてヨーロッパへ売り込もう、という構想だったそうです。三県のうち、うまく根づいたのは香川の小豆島(しょうどしま)だけ。雨が少なくあたたかい気候が、地中海によく似ていたといわれます。

つまり香川は、国内で最初にオリーブ栽培が根づいた土地。まちの軒先の一鉢一鉢は、その百年以上の歴史の、いちばん小さな枝分かれなのかもしれません。

でも、琴平町の「町の木」はオリーブじゃないんです

ここで、ひとつ引っかかることがあります。

オリーブはあくまで「香川県」の木です。では「琴平町」の木はというと……調べてみると、オガタマの木でした。「オガタマ」は「招霊(おぎたま)」、つまり神さまを招くという言葉が変化したものと伝えられ、昔から神社に植えられてきた木です。神楽(かぐら)で使う鈴も、この木の実の形をまねたものだとか。海の神様の門前町にふさわしい、いかにも琴平らしい木えらびです。(ちなみに町の花はサクラと美女桜(びじょざくら)。どちらも昭和63年に決まっています。)

念のためにもう一度言うと、琴平町として「オリーブを植えましょう」と旗を振っているわけではないのです。町の木は、ちゃんと別にある。

それでも、軒先にはオリーブが並ぶ。

何本もの支柱で枝を整えられた大株。まわりの鉢の多さにも、育てる人の本気がにじみます

誰かに配られたふうでもなく、そろいの鉢というわけでもなく、それぞれの家がそれぞれのオリーブを、ごく自然に置いている。「県の木だから」と意識しているのかどうかも、たぶん人それぞれでしょう。

でも、だからこそ、なんだかいいなと思うのです。役場に言われたからでも、観光客に見せるためでもなく、「香川といえばオリーブやろ」という気分だけで、一鉢ずつ育てている。これはもう、郷土愛というか、"オール香川"の心意気というか。町の木は町の木、県の木は県の木で、どちらも大事にする欲ばりな感じが、とても香川県民らしい気がしました。

考えてみれば、香川の「オリーブ推し」は筋金入り

軒先のオリーブは、ながめるためだけのものではないようです。よく見ると、小さな実をつけている株もありました。

琴平の軒先のオリーブにも、ちゃんと実が。香川では、オリーブは"育てるもの"なんです

そもそも香川のオリーブ好きは、県をあげての年季の入ったものです。たとえば、魚。県の魚ハマチにオリーブの葉を混ぜた餌を与えて育てたオリーブハマチ。牛もいます。小豆島のオリーブを飼料にした讃岐牛はオリーブ牛と呼ばれ、いまや県内ぜんぶが産地です。オリーブ油には香川県独自の品質認定制度があり、小豆島にはオリーブ公園、さらには「オリーブ盆栽」なんてものまで生まれています。

魚、肉、油、盆栽、そして軒先の鉢植え。……ここまでくると、オリーブは香川の人にとって、育てる対象というより、暮らしの一部なのだと思えてきます。

ちなみに、県内のオリーブ産地をならべたリストに、琴平町の名前は入っていません。畑としての生産地ではないのです。でも、"軒先の鉢植えの数"という部門があったなら、琴平はけっこう上位に食い込むのではないでしょうか。

まとめ:門前町では、視線を少し下げて歩いてみてください

こんぴらさんの門前町は、たしかに和の町並みです。でも、その足元には地中海生まれの木が点々と根を張っていて、育てているのは、旗を振られたわけでもない、ふつうのまちの人たちです。

葉の裏は、うっすら銀色。この光り方を覚えておくと、まち歩きで見つけやすくなります

次に参道を歩くときは、提灯や看板だけでなく、軒先の高さにも目をやってみてください。細長くて、裏がふっと銀色に光る葉。あれがオリーブです。何鉢見つけられるか、数えながら歩くのも楽しいはずです。

そして、もし香川のオリーブの"本家"を見たくなったら、小豆島まで足をのばしてみるのもおすすめです。琴平の軒先で見た小さな一鉢が、島では見上げるほどの大樹になって並んでいます。

カテゴリー:ことひら百景/歴史・文化

エリア:琴平/町外

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